「先生、こっち見て!」〜子どもからのメッセージ 塾も学校も、教師は同じ

どの子も居場所を求めて(最終回)vol.15

第15回:どの子も居場所を求めて(最終回)

現代社会では、子どもたちは、小さな時からいくつものグループに所属していることが、珍しいことではなくなりました。学校、スポーツクラブ、合唱団や英語教室……さまざまな習い事に学習塾に、所属しているグループの数だけ順応しなければなりません。

子どもにとって、それらすべてが”行かなければならないところ”というわけではないでしょう。学校以外の所は、学校ほど行かなければいけない所という自覚があるわけではないので、むしろ子どもにとっては“行きたい場所”である度合いが大きいはずです。稀には、保護者の強い願いであったり、きょうだいが皆その道を通って来たという流れの中で、当然の事として塾や習い事に所属している場合もあるでしょう。

そんな子どもといろいろな集団との関わりを、一歩下がって客観的に見てみると、子どもたちは、自分にとって居心地の良い場所で過ごす時間での思いに支えられて、それほど魅力的でない場所へも通い続けることができるのだということがわかります。

「先生あのね。きょうは、ピアノの日なんだ。今日はきっと褒められる。

いっぱい練習して、見ないでも弾けるし、先生が、『お歌の様に』って言ったから、歌いながら弾いてみたらいい気持ちなのね。良子先生(ピアノの先生の名前)にこにこ花丸くれるよ、きっと。楽しみ楽しみ」

小学1年生のA子は、まじめに一通りのことはこなす児童ですが、学校では目立たない子で、毎日学校が楽しいと思ってくれているだろうかと、心にかけている子どもです。でも、ピアノの日の朝は、必ず私の机の傍に来て、このような話をするのです。A子の生活の中で、ピアノレッスンの短い時間が、とても大切な「居場所」なのでしょう。学校より、英語教室より、何より大切な「ピアノの日」と言う居場所があるから、A子の日常が、滞りなく流れているような気さえしました。

「昨日の問題、わかったんだけど、塾でね、似たので、面積の問題があって、塾の先生が、僕にやらせてくれたの。それで、黒板でみんなに説明できないと思ったら、この前もだけど、またできちゃってさ、超面白くなっちゃったよ」

小学4年生のB男です。しょっちゅう塾での話をしてくれます。学校嫌いだとか、何か問題があるわけではありませんが、この子は学校より、塾に心地よい居場所があり、それが自分の日常のよりどころになっているのでしょう。B男の話からすると、学習塾が復習の場になっているようですが、彼にとって塾はちょうど良い大きさの集団であり、そこで仲間に教えたり、発表したりする居場所を確保しているので、学校生活での意欲が保てているのでしょう。

学習塾については、この逆の場合もあります。塾が予習の場となり、学校が上記の塾におけるB男のような役割を果たしている場合、学校の授業場面が、その子の日常で一番大切な居場所になっていたりするのです。

義務教育の年齢にある子どもたちにとって、その9年間は学校生活が軸となります。ですから学校の教師は、子どもの人生の多大な時間を過ごす学校生活の中に、どの子にも居場所があるように配慮し、工夫しています。

中でも特に心がけているのが、教科の授業の中に居場所が作れるようにすること。なんといっても、子どもは「向上心」「好奇心」のかたまりです。彼らにとって、「できるようになる」「わかるようになる」ことは、学校へ来る最大の魅力だからです。また、そうあって欲しいと、すべての教師は、願っていると思います。

とはいえ、行事やイベントに、居場所を感じる子どもも少なくはありません。企画の場面での活躍に心地よさを感じたり、表現の場面で目立つ役割にこれぞ自分の居場所と自覚したり、それもまた様々です。

担任していた小学6年生の女子児童C子が、不登校状態になったことがあります。でも、その10日ぐらいの間、学習塾には通っていました。学校にこれといった事件や友だち関係のトラブルがあったわけではなかったようです。むしろ学業は優秀という部類に入るC子、友だちを押しのけて担任との話に割り込んだり、学級での活動でも「これがやりたい」などと主張をしたりもせず、割り当てられた役目をそつなくこなしていました。そんなC子にとって、嫌な場所ではないけれど、これといった魅力がないのが学校だったようです。

一方、塾は彼女にとって「競争の場」でした。後でわかったことですが、頑張ると順位が上がる=「努力が評価され数字に出て来る」ことにより、何も言わなくても、主張しなくてもちゃんと活躍でき、それを認められることが、彼女にとってはとても居心地がよく、まさに塾は自分が認められる居場所だったのです。

担任であった私は、放課後に「みんなで遊ぶ会」を計画し、そこにクラスメートのはたらきでC子を参加させることができました。1日、2日参加している中で、技に挑戦する縄跳びがはやりだし、C子は、あまり得意でない縄跳びで、クラスの縄跳び名人と競うことになりました。皆に応援されながら縄跳び名人と競う毎日を重ね、あるとき、

「休み時間にやろうよ」と言う縄跳び名人の誘いをきっかけに、C子は学校生活に復帰しました。

子どもは、いろいろな形で、日常生活のどこかに居場所を作り、そこで自分を癒し、いろいろな場所での自分の存在意識のバランスを取っているのだと思います。大人には思いもよらぬ居場所を求めている子、はたから見ていてもとてもわかりやすい形で居場所作りをしている子、さまざまです。

子どもの生活の一部を担う「教師」「指導者」と名のつく位置にいる私たちは、いつもいろいろな形で子どもの居場所作りに関わっていることを忘れないでいたいと思います。

プロフィール

丹伊田弓子(にいだゆみこ)先生
元川口短期大学こども学科教授
東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師

東京学芸大学・同大学院卒。東京都の公立小学校教諭として勤務し、生活科カリキュラムの制定に携わる。2012年3月、川口短期大学教授を退任。現在、東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師。日々、教職を目指す学生の指導にあたる。

「塾と学校とでは役割は異なりますが、子どもの学びという現場では、塾も学校も同じ。先生の役割も責任も同じだと私は思っています。小学校の教師として34年、その後大学教師としてたくさんの子どもたちに接してきました。その経験を通して学校の先生は子どもとどう向き合っているのかを感じていただき日々の指導の参考にしていただければと願っています。」

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