学習マンガ 江戸のふしぎ

江戸東京博物館 市川寛明先生

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マンガ/松本麻希

市川先生の江戸解説―その7

よく“今の小学校の起源は寺子屋”とも言われますが、この両者の間には学ぶ目的や授業スタイルにおいて、非常に大きな違いがありました。その違いは前回学んだように、江戸時代の道徳主義に対して明治以降の能力主義でした。

学問と道徳が一体となった江戸時代の寺子屋は、ある意味でとても理想的なようにも思えるのに、なぜこの寺子屋は残らなかったのでしょうか。そんな疑問に答えようとしたのが今回のテーマです。

固定された身分制度が長く続くに従い、マンガに見られるように、あちこちに歪みが出てきます。やはり必要なのは優秀な人材だというわけで、18世紀半ば以降になると、試験制度が導入され始めたのですが、なかなかうまく定着しませんでした。身分制の厚い壁のもと、試験に受かったからといって、すぐに出世したり、重要な役職に登用されたりすることはほとんどなく、もちろんほめられたり褒美がもらえたりということはありましたが、人材登用制度の抜本的な改革にまでは至らなかったようです。しかし開国か鎖国かをめぐって議論が沸騰する幕末期になると、能力主義への要求はかつて内ほどに強く、かつ現実的になっていきました。幕府側にも薩摩、長州、土佐、佐賀といった雄藩にも、身分は低いが才能に恵まれた若者が、政治に参画していく風潮が高まっていました。彼等を突き動かしていたのは、民族存亡の危機感と能力に即した人材登用だったのです。

例えば幕末の旗本で、ペリー来航の際海岸防禦御用掛を務めた、川路聖謨(かわじとしあきら)は、非常に貧しい家に生まれながら、代官の家に養子に入り、幕末のどさくさの中で能吏として重用され、やがて平時ではありえない出世を実現していきました。このように、代官や与力といった実務に長けてはいるが身分の低い家柄に生まれた下級武士や、百姓の家から、優秀な人が養子として下級武士の家に入っていき、実績を上げた人が頭角を現して出世していくというパターンが、天保の改革以降各地にみられるようになっていきました。川路は「馬と子はせめたおせ」と言っていますが、これは、能力主義に立脚したスパルタ教育のすすめです。教育に対する川路の信念は、寺子屋を特色づけた「おおらかな学び」とは対照的な教育観といえます。

江戸時代、庶民教育機関の主役であった寺子屋も、対外的な危機、人材登用の必要性、身分制の解体といった社会の 大きな変革を背景に、明治政府が設立した小学校に、主役の地位を譲らなければならなかったのです。

プロフィール

市川寛明先生
江戸東京博物館学芸員

1964年、愛知県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。担当展覧会として『参勤交代』(1997年)、『大江戸 八百八町』(2003年)、『徳川将軍家』(2003年)、『新撰組』(2004年)。今年度人気を博した『坂本竜馬』展も手がける。編著に『図説 江戸の学び』(河出書房新社)、『一目でわかる江戸時代』(小学館)等。

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