学習マンガ 江戸のふしぎ

江戸東京博物館 市川寛明先生

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マンガ/松本麻希

市川先生の江戸解説―その10

今回は、江戸の文字で書かれた古文書、いわゆる「崩し字」を読んでみました。ここで紹介した古文書の読み方は、私がいつも古文書読解講座で使っている方法なので、少し難しいかもしれません。その核心は、もっとも使われる頻度が高い文字ほど原形を留めない程に崩されるという事です。言い方を変えると、大きく崩れる文字は崩れても読めるから崩れるのだ、ということです。そして頻度が高く、大きく崩れる文字は崩し方を丸暗記する以外にない、というのが私の古文書学習法なのです。ただ、外国語を習得するときのように、その暗記の量を最小限にとどめるための工夫が大切だと思っています。

しかし、江戸時代の古文書を解読するのは簡単ではありません。例えば、一通の古文書のなかの同じ行に同じ文字がでてきた場合、異なる崩し方(書き方)をしたりすることがあります。とてもやっかいな事なのですが、わざと違う崩し方を使って「僕はいろいろな文字の書き方を知っているよ」とアピールしたりしているのです。

さて今回取り上げている古文書は、大伝馬町にあった木綿問屋仲間の申し合わせを記録したものです。江戸の問屋は自ら商品を作って販売するわけではないので、田舎から商品を持って来る行商人が商売敵の商人に行かないようにしなければなりません。商品を独占的に集め、販売するために、問屋仲間を結成して、もしも他の問屋に商品を持ち込んだら今後は問屋仲間が結束してその商人とは取引をしない、という取り決めを交わしていたのです。一方で行商人からみれば、江戸に商品を持ってきたら自分で直接売ってしまうのがいちばん儲かる方法ですが、この場合、すべての商品を売り切るまで宿代を払って江戸に滞在しなければなりません。そのため宿泊費がかかってしまうリスクを避けるために、多少儲けを犠牲にしても問屋に手数料を支払って委託販売した方がリスクを減らすことができたのです。この古文書は、江戸時代の商人たちの商売の仕方を具体的に読み取ることができる興味深い資料です。

プロフィール

市川寛明先生
江戸東京博物館学芸員

1964年、愛知県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。担当展覧会として『参勤交代』(1997年)、『大江戸 八百八町』(2003年)、『徳川将軍家』(2003年)、『新撰組』(2004年)。今年度人気を博した『坂本竜馬』展も手がける。編著に『図説 江戸の学び』(河出書房新社)、『一目でわかる江戸時代』(小学館)等。

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