学習マンガ 江戸のふしぎ

江戸東京博物館 市川寛明先生

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マンガ/松本麻希

市川先生の江戸解説―その11

今回は、江戸の広告について解説しています。今では商品を作る製作費よりも宣伝に多くの経費をかける、なんていうことは珍しくありません。しかし江戸時代は現代のテレビやラジオのような一度に大量の情報を不特定多数の人々に伝達するメディアがありませんでした。そのため商品を販売するための宣伝広告が本格的に始まるのは明治時代以降だと一般的には考えられています。

しかし江戸では「仙女香(せんにょこう)」や「江戸の水」といった化粧品を販売するため、女心を巧みにとらえる台詞(いま風にいえばコピー)を添えた広告を活用していました。江戸時代の人々は、商品をより大量に販売しようと思えば、広告を用いることが有効であることをよく知っていたのです。そのことは、文字を読める人が、特権階層ばかりではなく、多くの庶民層にまで広がっていたことをよく示しています。また膨大な数が残されている「かわら版」をみても、情報が商品となっていた江戸の成熟した様子をうかがい知ることができます。

今回のマンガの中に出てくる歌川広重の『東海道五拾三次』には、美しい風景ばかりでなく庶民の生活の様子が描かれています。こうした浮世絵は庶民の人気を博した商品でした。ヨーロッパの画家は、王侯貴族に抱えられないと生きていけないので、彼らに気に入られるような画題、すなわち肖像画や宗教画を多く描き、庶民の暮らしぶりを画題とすることはありませんでした。しかし江戸時代の日本の浮世絵師は、大名に召し抱えられていたわけではなく、自分達が描いた絵を売りながら生計を立てていました。浮世絵師の生活を支えていたのは、大名ではなく、浮世絵を楽しみとして購入する庶民層だったのです。このような現象が18世紀の江戸に成立していたということは、外国と比べてみても非常に驚くべきことだと思います。

浮世絵が庶民に愛された商品であったことは、よく知られた事実であり、いまさら特筆すべき事もないように思えます。しかし外国との比較でいえば決して当たり前の出来事ではありません。庶民が浮世絵を買うようになると、絵を描いて生きていきたいと願う絵師ばかりでなく、絵に文章を添えて売りだす作家も登場します。江戸時代は絵師や作家が自分の作品を売って生きていけるようになった初めての時代だったのです。

このように江戸時代の広告や浮世絵を見ると、西洋で始まった近代化の芽が、実は江戸時代にも独自に芽吹き始めていたことに気づきます。江戸時代はいろいろな意味で現代を先取りしていた時代でもあったのです。

プロフィール

市川寛明先生
江戸東京博物館学芸員

1964年、愛知県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。担当展覧会として『参勤交代』(1997年)、『大江戸 八百八町』(2003年)、『徳川将軍家』(2003年)、『新撰組』(2004年)。今年度人気を博した『坂本竜馬』展も手がける。編著に『図説 江戸の学び』(河出書房新社)、『一目でわかる江戸時代』(小学館)等。

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