「先生、こっち見て!」〜子どもからのメッセージ 塾も学校も、教師は同じ

子どもたちは私の一番の先生vol.1

第1回:子どもたちは私の一番の先生

塾と学校とでは役割は異なりますが、子どもの学びという現場では、塾も学校も同じ。先生の役割も責任も同じだと私は思っています。小学校の教師として34年、その後、大学教師としてたくさんの子どもたちに接してきました。その経験を通して、学校の先生は子どもとどう向き合っているのかを感じていただき、日々の指導の参考にしていただければと願っています。

私が34年間の小学校現場での体験を通して、確実に学んだことは、「教師にとって一番の先生は、目の前の一緒に生活している子ども」だということです。

算数の時間は算数の嫌いな子、国語の時間は国語が始まると騒ぎ出す子と、それぞれの時間で先生は変わります。”そういう子が楽しんだり、笑顔を見せたり、「分かった」と言ったとき、私のその時間の授業は合格点”――そう思って毎日、授業をしてきました。

私にたくさんのことを語り続けてくれた子どもたちの中でも印象深いのは、最も大切な「教師と子どもとの信頼関係」を強烈に考えさせてくれた男の子です。彼と私の間に信頼関係が出来ていたかどうか、結果は誰にもわかりません。しかし、大切なことを考え続けさせてくれた彼との1年間を紹介し、「教師にとって子どもと信頼を築く」とはどういうことなのか考えてみようと思います。

彼と過ごした1年はいつもと同じ1年でしたが、私にはあっという間の、しかし、振り返るととても長い1年なので、いくつかに分けてゆっくり振り返っていきたいと思います。


その1 ―「出会い」

4月。久しぶりの高学年。今日は授業が始まる1日目、張り切って授業の準備をし、わくわくする思いで朝の会を終え、授業に入る。1時間目は社会科の授業。

授業が始まると、話し始めて5分もたたないうちに、朝の会では神妙に座ってみんなと行動を共にしていたA君が立ち上がり、ふらりと教室の外へ出て行った。前任者から引き継いでいた私は、「来たな」と心の準備をした。

クラスのみんなに目を通すべき教科書のページを指示し、A君の後を追って、私は廊下に目を走らせた。A君は、まだ何も貼ってない新学期特有の殺風景な掲示板に寄りかかって、私の出て来るのを待っている様だった。そして、私の顔を見るなり廊下のまだ冷たく感じるPタイルの床に座り込んだ。私も並んで床に座り込み、肩を並べて向かいの窓に目線を向けたまま、「授業だよ。社会嫌いなの?」と声をかけた。

「・・・」沈黙が長く感じた。シーンとした教室をうかがい、子どもたちもA君と私のやり取りを気にしているのだろうと気になった。すると突然、A君がつぶやいた。
「教師なんてさ、嘘つきだよな。嘘つきだから、オレ、教師なんて信用しねえ」
「なんで、先生はみんな嘘つきって思ってるの?」
「いいからさ、あんたも他の奴らが大事なんだろ。早く教室帰れば」
手首で、ボールでも投げるような動作をしながら、A君は私を試すように、気のない話し方をした。
「ねえ、あなたに会って、今日で3日目。それにこうして話すのは初めて。なのに何故、私を嘘つきって言うの? この3日間で、何か嘘ついたっけ」
「そんなことじゃなくて、教師なんて信用できないの!」
少し強い口調になって、しかし私の顔は見ようともせずに、A君は「信用できない」を繰り返した。言葉に詰まって、1、2分の沈黙が続いた。
「私はクラスの子と約束して、今まで約束したことができなかったことはある。でも、嘘をついたことはない。約束が果たせなかったときは、ちゃんと謝って来たし、できないわけも話して許してもらった。あなたにだってそうするつもり。嘘なんかつかない。あったばかりで、そんなこと言うなんてひどくない?1年たって、もしあなたがそう思うなら考えるけど、今、そんなこと言われたくない」
私は本気で悲しくなって、気が付いたら一生懸命A君に訴えるように話していた。そんな私をあわれに思ったのか、しばらく私を見ていたA君は教室に戻り、機嫌良く授業に参加した。


これが、A君と私がしっかり向き合った最初です。信頼されていないどころか、「信頼」ということに関して言えばマイナスの状態からのスタートでした。しかし、彼の心をつかみ、学級の中に彼の居場所をどう作っていくかが、このクラスづくりの大きなカギになること。それには、彼との間に人一倍の信頼関係を築くことが大事だということが、私にはわかっていました。
ですから、この時、「約束したことは、どんなに小さなことでも守ろう。約束したことができなかったら、そのわけをちゃんと話そう。どんな小さなことでも、嘘をついたり、ごまかしたりしない」と言うことを、いつもの年より心してやり通そうと、私は改めてしっかり自分に言い聞かせたのです。

こうして、A君と私の短くて長い1年が始まりました。

プロフィール

丹伊田弓子(にいだゆみこ)先生
元川口短期大学こども学科教授
東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師

東京学芸大学・同大学院卒。東京都の公立小学校教諭として勤務し、生活科カリキュラムの制定に携わる。2012年3月、川口短期大学教授を退任。現在、東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師。日々、教職を目指す学生の指導にあたる。

「塾と学校とでは役割は異なりますが、子どもの学びという現場では、塾も学校も同じ。先生の役割も責任も同じだと私は思っています。小学校の教師として34年、その後大学教師としてたくさんの子どもたちに接してきました。その経験を通して学校の先生は子どもとどう向き合っているのかを感じていただき日々の指導の参考にしていただければと願っています。」

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