「先生、こっち見て!」〜子どもからのメッセージ 塾も学校も、教師は同じ

学びの場は小さな社会~「いろんな子がいるからこその学びの豊かさ」vol.6

第6回:学びの場は小さな社会~「いろんな子がいるからこその学びの豊かさ」

先日、上野動物園でやった現地観察授業も含め、もう、後期の授業が5回も済んでしまいましたが、季節は、やっと秋を感じる日が顔をのぞかせたところです。

今回は、子どもが集まる学びの場の意義が、テーマです。

学校で活躍できにくい子が、こんな気持ちで塾に、居場所を求めている場合もあります。そういう点では、学校も塾も、同じ役割を担っていると思います。

現場教師の、教師としての「小さな幸せ」、でもこれが、教師を続ける大きな力になっていることは事実です。そんなささやかな幸せをご紹介しました。


学校生活の単位である学級集団、そこでの先生と子どもの出会い、そして子どもたちどうしの出会いは、偶然のなせる業です。

私は、新しい集団に出会うときの、なんとも言えないわくわくした気持ちを何度も味わってきました。人生に何度も、偶然の出会いに胸ときめかせる体験ができるなんて、教師ならではの役得だと思います。

出会いの楽しみがあまりにも大きなものだけに、学級として出会った子どもたちも、私も、この学級で、自己有用感をもって1年間を生き生きと過ごしたいという新学期の願いの大きさも、いつもながら変わらないものです。

しかしまた、30人いれば30通りの思いがぶつかり合って生活していく日常の大変さが予想されるのも現実です。

たとえば、授業中に歩き回る、いわゆる座学の苦手な子がクラスにいると、「勉強の邪魔をする子」というレッテルを貼られて、仲間からも、保護者からも敬遠される存在になることが多いものです。しかし、一見学習の妨げになるような子が、授業を広げたり深めたりするきっかけを作る場合があります。

ある物作りの授業から

「大ちゃん、早く作りなよ。いっしょにとばそうよ! てつだってあげようか?」

ひとつのことに集中するまで時間がかかり、多動傾向のある大輔は、自分のロケットがなかなか完成できない。光男の助けで何とか形にして遊び始めたが、うまく飛ばせないためか、すぐに飽きてしまう。とうとう自分の班にいるのがつまらなくなったのか、他の班をのぞき始めた。そこで、声をかけた。

「大ちゃん、先生のお手伝いして! 誰のが一番高く飛んでるか見つけてきてくれる?」

「良いよ、先生、いってきます」

喜んで班をまわり始めたが、次の班で大輔はもどってきた。

「先生、チカちゃんね、ゴム2本にしてるから、飛んでる。僕もチカちゃんみたいにしたいよ、だってずるいでしょ」

「そうか、大ちゃんは、一番の人、見付けないで、よく飛ぶ工夫をみつけたんだ。じゃあ、大ちゃんもそれ、みんなに教えてあげないとずるいよね。チカちゃん、いい?」

「じゃあ、大ちゃん、チカちゃんの発見みんなに教えてあげて」

「はーい。みんな、聞いてください。ロケットのゴムだけど、チカちゃんはね、ここんところ、2本にしてるの。そしたら、きつくて強くなるのね。それで、力がいるけど、僕のよりいっぱい速く飛んでたよ」

大輔のこの一言で、他の子どもたちは、ゴムの種類や本数を変える他、ロケット本体の大きさを変えたり、素材の違うものを使ったりと、色々工夫し始めた。

「大ちゃん、すごいね。大ちゃんがチカちゃんの工夫をみんなに教えたから、みんなもいっぱい工夫してるよ。大ちゃん、良いこと教えてくれたね。」

ほめられて照れながら、光男の助けで自分のロケットを改造した大輔は、自分の班の中で、友だちとロケット飛ばしの競争に夢中になり始めた。

大輔は多動傾向があり、特別支援を要するが、伝えることは下手ではない。光男は世話好きであるが、いつも一緒に行動する友だちがいると、学習に集中できる子であり、大輔は光男のお気に入りの一人。

この学習場面では、チカは、自分の良さを大輔によって全体に伝えてもらい、みんなに評価されて、自信の貯金ができました。大輔は、思わぬ自分の発見を教師によって価値付けられ、光男の助けで班の中で落ち着いて学習するきっかけを得ました。光男も、大輔が一緒に行動することで、学習への安定感を得ました。

それぞれが長所でもあり短所でもある個性を支え合って、全体の学習をグレードアップさせながら、大輔も光男もチカも、この学級集団の大切な一人として存在感を示しています。

教室という、学びの場は、本当に小さな社会です。しかし、どの子にとっても、「認め合い、学び合う事」を学ぶ社会生活のスタートの場です。

特別支援を必要とする子にとっても、高いリーダー性を発揮する子にとっても、 どんな子にとっても学びの場は、育ち合う場、あなたがいて、私がいるからこそ、育ち合える場なのだと、確信しています。

「ある子の助けで、ある子が二重とびに成功し、クラス中が拍手に包まれ、牛乳で乾杯した」「何度も間違う子に『教室は間違うところ、大丈夫。もう一度がんばれ』と声をかける」――それぞれが、支え合い、学び合って成長していく、こんな場面に出会いたくて、私は毎日子どもを見つめてきた気がします。

プロフィール

丹伊田弓子(にいだゆみこ)先生
元川口短期大学こども学科教授
東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師

東京学芸大学・同大学院卒。東京都の公立小学校教諭として勤務し、生活科カリキュラムの制定に携わる。2012年3月、川口短期大学教授を退任。現在、東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師。日々、教職を目指す学生の指導にあたる。

「塾と学校とでは役割は異なりますが、子どもの学びという現場では、塾も学校も同じ。先生の役割も責任も同じだと私は思っています。小学校の教師として34年、その後大学教師としてたくさんの子どもたちに接してきました。その経験を通して学校の先生は子どもとどう向き合っているのかを感じていただき日々の指導の参考にしていただければと願っています。」

これまでの記事

  1. 学研塾ホールディングス
  2. トップメニュー
  3. 講師憲章
  4. 学研・塾講師検定
  5. CSR活動
  6. お知らせ

コラム

学研塾HDグループ・トピックス

早稲田スクール

9/17:中3対象の「第2回共通テスト対策特訓」スタート

あすなろ学院

9/16、23:数英理社、入試対策実戦ゼミ体験会=毎年的中多数の入試予想問題演習と解説講座を体験

学習塾イング

「中3生対象 志望校突破ゼミ9月スタート!」土日を中心に「実力テスト対策」「入試対策」のゼミを開講。(ゼミのみ受講も可能)

早稲田スクール

9/10:小6受験生対象の「絶対合格特訓シリーズJr」スタート

学習塾イング

「イング美原校リニューアルOPEN!」9月新入生、リニューアル特典。入学金免除&9月授業料・学習支援費:50%OFF(先着10名様限定)

あすなろ学院

9/1〜30:ドリスタ7。定期テスト対策はこれでばっちり。7大イベントに参加で成績UP&景品GET!

全教研

8/24〜26:エコアドロケット・種子島

全教研

8/19〜23:小4〜中3夏期合宿(小4小5中1中2は8/22まで)

全教研

8/18:中学生特待選抜テスト

全教研

8/7〜11:高3夏期合宿

ページトップへ戻る