「先生、こっち見て!」〜子どもからのメッセージ 塾も学校も、教師は同じ

学校や塾の役割~自分が必要とされる居場所、やりがいを感じる居場所を、子どもはみんな探しているvol.8

第8回:学校や塾の役割~自分が必要とされる居場所、やりがいを感じる居場所を、子どもはみんな探している

学級の人数が少ない、全校児童数も少ない。6学年のうちの半分が短学級の学校での話です。

職員室で子どもの話をする先生方は、「うちの学校は、みんなヒーロー、ヒロインだから」という言葉をよく口にしました。そんな教員仲間によって、「みんなヒーロー、ヒロインの学級経営」という精神が、私の中に育てられていったのかもしれません。「クラスのみんなが、『自分がいなきゃ』と思って登校する学級にしたい」という思いの中で仕事ができた、教員として最も幸せな時期でした。


このクラスは、私の教員生活で一番少人数の学級であった。

気に入らないことがあると、すぐに切れる子。10歳でここまで思いやりと、統率力があるのかと感心するほどリーダー性に富んだ子。漫画(イラスト)のうまい子。要領のいい子。アイディア豊富だが口下手で、気持ちを伝えるのが下手な子。やや特別支援の必要な子。外国人家庭の子。口は達者だが、なかなか行動できない子。逆に、不言実行型の子。――作文、音楽、制作、天体、科学、運動、球技、等それぞれ得意なものを持っている、個性の強い集団だった。

子どもたち自身、「喧嘩もするけど、仲のいい集団」と言っていたように、学級では毎日喧嘩が絶えなかった。しかし、この子どもたちの喧嘩は、大抵の場合、安心して見ていられた。それは、どこか温かく、互いへの思いやりが感じられ、そして真剣だったからだ。よくありがちな白けた関係が、この集団にはなかった。良くも悪くも、真剣にぶつかりあっているので、喧嘩が多いのだと私は思っていた。適当に流さず、「だめはだめ、良いは良い」を、みんなで確認していたのだ。

少人数が故に、互いに互いの得意や不得意がはっきり見える。そんな状況下で、私は担任として「全員で挑戦する目標を持たせ、クラスを活気づけ、達成感を味わうことで、団結を深めたい」と、学級全体のテーマを探していた。

このクラスには、とても努力家だが学校生活全般に特別支援を要する児童、Aがいた。Aは特に体育面が苦手で、チームを組むときなど、格別の配慮が必要であった。しかし、なぜか1輪車だけは、クラス1の腕前だった。

そこで、「全員に成功の可能性のあること」として、私は学習発表会のテーマに、クラス全員が何らかの形で出演する「1輪車のプログラム」を提案した。あらかじめ一輪者は早い時期から体育でも取り上げ、学級のみんな、それぞれが目標を持ってじっくり取り組むようにしていたのだ。

初めはあまり乗り気でなかった子どもたちも、1輪車が上達するにつれて、学習発表会にみんなで「1輪車のプログラム」をやろうという案に乗ってきて、上手な子が、構成を考えたり、曲をつけようという話もちらほら出てきた。

1輪車が苦手な何人かからは、話し合いの度に反対意見が出ており、学級会は、かなり紛糾する時もあった。しかし、クラス全体の1輪車のレベルアップにつれ、徐々に反対意見が消えていき、いつしか1輪車の練習に余念のない子どもたちであった。

2学期になると、学芸会の準備が始まった。何にでも一生懸命な子どもたちは、台本選びで、また、ひともめした。演劇好きだった子どもたちは、結果として自作自演の道を選び、劇のテーマになんと、「クラス全員が1輪車のプログラムを作り上げるまで」を取り上げたのである。

「自分たちの劇をやりたい」という子どもたちの願いと、「全員で挑戦する目標を持たせ、クラスを活気づけ、達成感を味わうことで、団結を深めたい」と言う教師の願いが、1輪車と言う教材を介して、一致した瞬間であった。

それからは、台本作り(何度も作り変えがあった)、役決めのオーディション、練習、舞台作り、そしてますます力の入った、1輪車の練習、これらのことがクラスの生活の中心になった。

そして、目標を同じくした子どもたちは、他教科の学習でも、読書や全校マラソンの学年目標などにも意欲的に取り組んだ。そこには、担任が意図した「建設的ぶつかり合い(時にはケンカも)」を通しての、「学び合い」「育ちあい」が生まれていた。

“学校があるから”ではなく、“目標があるから”“行きたいから”学校へ来る子どもたちを感じ、毎朝の元気いっぱいの「おはようございます」を楽しみに、教室へ向かう自分がいた。


学校の様に、子どもにとって「行かなくてはいけないところ」は、選んで通う習い事や塾よりも、ある意味で、「行きたい」と強く願う魅力を持たせるのは難しいことです。

子どもが「そこへ行きたい」と自発的に思うには、いくつかの理由があるでしょう。ご紹介した上述のクラスの様に、集団が目的をもっていて、自分がその一員であるという意識が非常に強い場合、そこへ行くことが当面の生き甲斐となっているというケース。私にとっても稀な、理想的なケースです。他にも、「あこがれの先生がいる」「大好きな友だちがいる」「小さなことでも、そこでは自分が必要とされている瞬間があり、居心地が良い」など、様々な理由があるでしょう。

私たち教師は、これら、「そこへ行きたい」と子どもたちに思ってもらえるようなケースを生み出したいと、日々努力をしているのです。いつもこの例の様に大がかりな設定が出来るわけではありません。一人一人を伸ばすことを基本に、みんなががんばれる目標。たとえば、

「漢字の級を、全員今週中に一つは上げよう」

「前跳び30回、全員達成を目指そう」

「全員、1日校庭5週を実現しよう」

「掛け算九九、九の段20秒暗唱を目指そう」

等、その時の子どもの実態でハンディーをつけたりと、状況をみながら個人目標に拍車をかけるクラス目標を設定し、まず、みんなで達成したらみんなで喜ぶことを味わうのです。簡単な目標でいいのです。

「自分も頑張ったから、この『ヤッター』があるんだ」

こんなことを一度味わうと、学習目標であれば、そこに教え合いや学び合い、励まし合いが出てきます。そして、努力することの尊さを認め合う集団が育ってくるのです。

子どもはみんな、1つのやりたいことに魅せられていく場所を求め、みんなでやってる感、自己有用感の中に、居心地の良さをもとめて、居場所を探しているのだと思います。それが、家庭や学校かもしれません。塾かもしれません。けいこ場やスポーツのクラブチームで過ごす時間であったり、どこかわかりませんが、おとなは、それぞれの子が止まり木に出来る場所を用意することを心がけて、それぞれの場所で子どもを受け止めたい、そういう役割であらねばと思っているのです。

プロフィール

丹伊田弓子(にいだゆみこ)先生
元川口短期大学こども学科教授
東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師

東京学芸大学・同大学院卒。東京都の公立小学校教諭として勤務し、生活科カリキュラムの制定に携わる。2012年3月、川口短期大学教授を退任。現在、東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師。日々、教職を目指す学生の指導にあたる。

「塾と学校とでは役割は異なりますが、子どもの学びという現場では、塾も学校も同じ。先生の役割も責任も同じだと私は思っています。小学校の教師として34年、その後大学教師としてたくさんの子どもたちに接してきました。その経験を通して学校の先生は子どもとどう向き合っているのかを感じていただき日々の指導の参考にしていただければと願っています。」

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