「先生、こっち見て!」〜子どもからのメッセージ 塾も学校も、教師は同じ

教師たる条件 その1「教師としてのセンスを磨こう」vol.9

第9回:教師たる条件 その1「教師としてのセンスを磨こう」

子どもの学びという現場では、塾も学校も同じ。では、学校という場ではどのように先生が子どもと向き合っているのかを、塾の皆さんにお伝えしたく、この連載で私が子どもたちとの関わりの中で得た経験をお話ししてきました。

ある時、編集部の方が雑談の中で、「先生は今、教師を目指している学生たちをたくさん指導していらっしゃいますよね。教師に向いている人、いない人って、あるんですか?」とふと口にされました。

「そうですね。やはり学生を見ていて、この子は向いているな、向いていないなというのはありますね」と答えながら、「私にそう思わせるのは、いったい何なのか」ということに思いが馳せるようになりました。

技術やテクニックは、指導する中で付いていきもするでしょう。しかし、その前提となる「教師として必要なもの」は確かにあります。

そこで今回からは、私が教師を続ける中で感じた「教師たる条件」について、お伝えしたいと思います。


教師たる条件 その1「教師としてのセンスを磨こう」

「34年間、小学校の現場で勤めさせていただきました」

一口に言ってしまえば、一言で言える34年間です。しかし、あれもこれもと思いを巡らせれば、実に長い34年間でした。そして、その時その時の感謝や感動、「教師であってよかったな」と言う思いは、たくさん味わわせていただいたものの、「教師である自分に満足する」ということは一度たりとなかったような気がします。現場を離れた今ですら、「もし、今授業をするならこうしたい、ああしたい」と、考えてしまうことがよくあります。

小学校と言う教育現場で仕事をするにあたっては、沢山の研修に参加し、休みも返上し、ポケットマネーで遠くまで研究会に出かけ、先輩や同僚、全国の研究仲間と、学び合ってきました。求めても、求めても、「まだまだ」と何かが私を招きつづけ、その招きに最後の答えをもらうことなく小学校現場を去り、そして今ここに、まだその答えを求めている自分がいます。

私が未だに追い続けているもの・・・それは、「教師としてのセンス」だったのだと思います。

教師生活の後半に、私は義務教育教科の再編成と言う歴史的出来事に出合い、しかも、新教科「生活科」の設立にささやかに関与する場をいただきました。

この「生活科」と言う教科の理念は、教育の根源にかかわるものでしたが、そのことについては、回を改めてご紹介させていただき、ここでは、この「生活科」こそが、私に「教師としてのセンス」を追い求めさせるようになった原因であったことをお話したいと思います。

一般に、教科の教育研究と言うと、実践例から、いかに分かりやすく、いかに学びが定着するように教えるかを学び、教え伝えるということをいかに合理的に行うかを追究します。つまり、実践例を学ぶのです。

一方、生活科の研究では、「実践例を学ぶ」のではなく、「実践例に学ぶ」のです。子どもが違い、環境が違えば、生活科の授業はみんな違います。学習材(いわゆる教材)まで違ってしまうことすらあります。生活科の授業は、目の前の子どもが何を学びたがっているか、何を願っているかをしっかりつかむため、先ずは、できるだけしっかりと児童理解をすることが必要です。

ある教師経験3年目の先生の実践からは、「若いこの先生だからこそ、子どもの小さな発見にこんなに驚いて、こんなに感心して子どもに共感が持てたんだ。だから子どもと一緒にこんな授業が創れた。・・・子どもに寄り添うってこういうことなんだ」と学びました。

「生活科の授業、初めてやるんです」と、不安そうな中堅クラスの先生の“秋のクラス祭り”の授業では、初めて故に子どもと共感して、心から楽しむ姿に感動しました。「先生が子どもと一緒に楽しむことが、こんなにも授業に活気を生むんだ」と言うことを教えていただきました。

廃材を使っておもちゃを作る活動で、「制作や造形が大の苦手、何の支援もしてあげられないから、子どもに申し訳ない授業になりそう」と、悩んでいた先生の授業では、自信がないからこそ、一生懸命子どもと考え悩む先生を味方にしてチャレンジする子供の姿がありました。「子どもと一緒に、今を精一杯過ごすってこういうこと」と、その先生の姿が語っていました。

ベテランの先生の実践を追うこと、先輩の先生に追いつこうと努力すること、それも教師として技(教育技術)を磨くためにとても大切なことです。

しかし、授業研究を通して学んだ前述の3例は、みんな私よりずっと経験の浅い先生方が見せてくださった姿です。そこには、「すごい!」と思わせる見通しや、周到に準備された支援があったわけではありません。新鮮な、「子どもに対応するセンス」が、私を感動させ多くを学ばせたのだと思います。

それなりのたゆまぬ努力をしていれば、経験によってある程度の教育技術は、年齢とともに向上していくでしょう。しかし、子どもが求める教師にとって最も大切なものは、子どもに接する教師としてのセンスではないでしょうか。私を感動させたこの三人の先生には、生まれながらに持ち合わせた教師としてのセンスがあったかもしれません。しかし、それだけではないのです。自らも人・もの・こと等、自分を取り巻く環境に敏感に反応し、日々、感性・・・そして教師としてのセンスを磨き続けていらっしゃるように見えます。

私は、新米先生と学年を組むのが好きでした。傍目には、学年経営が大変なように見えるかもしれませんが、新米先生は、思いもよらぬ子どもウォッチングで、教師の感性、教師のセンスを刺激し、新鮮な世界に私を引き戻してくれるからです。

経験の浅い教師は、もちろん教育技術においては未熟です。しかし代わりに、敏感な感性で子どもに接するセンスを持ち合わせています。私が教育技術より大切だと思うこの「教師としてのセンス」は、人から教わるものではなく、自分で磨くものです。磨かなければ、光らず、さび付いていくものです。「実践学ぶ」とは、教師の姿、ありようを学ぶということ、教材や授業運びのみに焦点を合わせるということではないのです。

「実践学ぶ」姿勢を大切にし、技術とともに、教師としてのセンスを磨き続ける事こそ忘れてはいけないことだと思います。

プロフィール

丹伊田弓子(にいだゆみこ)先生
元川口短期大学こども学科教授
東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師

東京学芸大学・同大学院卒。東京都の公立小学校教諭として勤務し、生活科カリキュラムの制定に携わる。2012年3月、川口短期大学教授を退任。現在、東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師。日々、教職を目指す学生の指導にあたる。

「塾と学校とでは役割は異なりますが、子どもの学びという現場では、塾も学校も同じ。先生の役割も責任も同じだと私は思っています。小学校の教師として34年、その後大学教師としてたくさんの子どもたちに接してきました。その経験を通して学校の先生は子どもとどう向き合っているのかを感じていただき日々の指導の参考にしていただければと願っています。」

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