「先生、こっち見て!」〜子どもからのメッセージ 塾も学校も、教師は同じ

教師たる条件 その2「生活科から学ぶ“教育の根っこ”」vol.10

第10回:教師たる条件 その2「生活科から学ぶ“教育の根っこ”」

前回、私に教師としてのセンスを磨く事の重要性に気づかせてくれたのは、「生活科」との出会いであったことをお話ししました。そこで今回は、生活科という教科の誕生と、その教科理念をお伝えすることで、“教育の根っこ”について考えてみたいと思います。


生活科は、平成元年の学習指導要領の改訂によって誕生し、全面実施からやっと20年を超えた、歴史の浅い教科です。生活科設立当初は、「10年で消えてしまうだろう」という考え方をする教育関係者もたくさんいました。なぜなら、系統的学問体系を基にした「教える事が、教育だ」という学校教育に対する根強い考え方が、背景にあったからです。

しかし、教科「生活科」は、2回の学習指導要領でさらにシェイプアップし、小学3年生以上を対象とした、生活科と授業創りにおいて重なる理念を持つ「総合的な学習の時間」の誕生に大きな影響を与えました。そして、今やその地位を確実なものとしています。

そんな始めは軽んじられていた「生活科」・「総合的な学習の時間」が、近頃ますます意識してみられるようになったのは、社会の「学力観」に変化が起きたためではないでしょうか。

平成25年3月28日の朝日新聞に、保護者の「教育への期待」についてのアンケート調査が報告されています。そこには、保護者は、受験に役立つ知識理解よりも、安全に対する判断力や課題を見つけて追求する力、生きていくために必要な力の育成を望んでいることが、示されていました。この調査結果も、「生活科」や「総合的な学習の時間」が見直されてきていることを裏付けるひとつのデータといえるでしょう。

では、そんな生活科とは、どのような教科なのか。その概要を紹介し、教育を志す者として、この教科誕生が語っていることを学び返したいと思います。

生活科の誕生

生活科は、小1プロブレムが問題になった頃、幼児教育から小学校教育への段差をなくし、滑らかに幼少をつなげようという意図で作られました。従って、学習方法は幼児教育にみられる総合的な学び、いわゆる“あそびや体験を通して学ぶ”というスタイルになっています。そのため、授業参観での保護者、いや、教員仲間からさえ「学校の授業があそび?」「それで何を覚え、何を理解するのか?」といった声が聞かれ、新教科「生活科」には風当りの強いスタートとなりました。

生活科の理念

では、その一見「あそび」と捉えられがちな「生活科」が、いったい何を目指しているのか。それは次に示した生活科の理念から読み取れます。

生活科は、低学年児童の特色、とくに「子どもは本来伸びようとする力を持っている」を前提として、内からの学びを大切にして学習上の自立・生活上の自立・精神的な自立をめざすところにある。

つまり、生活科は、子どもの内からの「学びたい」という気持ちを大切に、授業創りをしていくのです。生活科は教科なので、教科書もありますが、子どもの内からの学びを大切にして授業創りをすると、子どもは一人ひとり違いますし、クラスの状況などの環境によっても、子どもの願いは変わってきます。

つまり、生活科としてのねらいは同じでも、学校によって、クラスによって、授業が異なるといったことが起きてくるのです。実際、テーマが同じでも、隣のクラスと異なった授業になるケースはよくありました。

生活科の目標

次に、生活科の目標を見てみましょう。学習指導要領には、次のように示されています。

具体的な活動や体験を通して、自分と身近な人々、社会及び自然とのかかわりに関心をもち、自分自身や自分の生活について考えさせるとともに、その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ、自立への基礎を養う。

いかがですか? この目標からだけでも、生活科がいかに他教科と異なるかがおわかりになると思います。

生活科は、今までの教科とは全く性格を異にしています。それが次の3点です。

  1. 学習方法……「具体的な活動や体験を通して」行う。
  2. 学習対象……「自分、社会、自然」等、生活全般。
  3. 目標……「自立への基礎を養う」

この3つが語っているのは、生活科は、教科書や資料に頼って、いわゆる机で学ぶ教科ではない。かかわり、実際にやってみて学ぶ教科だということです。そして、学びの結果も、「わかる」「理解する」で終わらずに、「できるようになる」「使えるようになる」「活用できる」というところまで求められる。これが生活科です。

では、この生活科の教科理念と目標は、従来の教育に何を語りかけているのでしょう。

私は「子どもの学びたいことを教師がキャッチし、学びの課題に向かって、共に悩み乗り越えていく体験を繰り返すことで、未知の世界を拓く力をつけること」こそが教育ではないか、という提案をしたのが生活科だと考えています。

そんな私が、生活科を通して、子どもたちを育てようと心してきたことは、次の5つです。

  1. 生活意欲
  2. 生活実践力
  3. 知恵を磨く
  4. 感性を磨く
  5. 自分を好きになる

3の生活実践力を除いては、「教えたり、訓練したりすることでは身に着かないこと」ばかり。どれも子どもの中から引き出し、育てていくものです。

もうお気づきでしょう。学校生活の中の生活科ですから、もちろん、調べたり、知識を得たり、わかったりしながら、学習は進んでいきます。しかし、生活科は、ある原理をいかにわかりやすく、速く合理的に教え込んでいくかということではなく、失敗し、やり直し、繰り返し、体験しながら自分で学びとっていくことを目指しているのです。

東大名誉教授の水野丈夫先生は、対談で、次のように言っておられます。

Educationを明治の初めに文部省の誰かが「教育」と訳しました。教え育てる。これは、本当は、誤訳なんです。Eというのは「外へ」、ducというのは「導く、引き出す」。Educeという動詞は、隠された能力を引き出すという意味しかないのです。「teachiする」という意味は、全くありません。(生活科情報誌 Who’s Who vol.l 東京教育研究所)

生活科は、「教育本来の意味を考えよ」と教師に向かって叫んでいます。これを受けて、教師である私たちが、「子どもが何をどんなふうにわかりたいと思っているのか」を、考えながら授業創りを進めたら、より多くの子どもたちの学びの意欲をつかむことができるのではないでしょうか。

少なくとも、生活科に出会ってからの私は、どの教科についても「今、この子は何をわかりたいと思っているのかな?」と、子どものかすかなつまずきを感じ取りながら、授業創りをするようになりました。

プロフィール

丹伊田弓子(にいだゆみこ)先生
元川口短期大学こども学科教授
東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師

東京学芸大学・同大学院卒。東京都の公立小学校教諭として勤務し、生活科カリキュラムの制定に携わる。2012年3月、川口短期大学教授を退任。現在、東京学芸大学・川口短期大学非常勤講師。日々、教職を目指す学生の指導にあたる。

「塾と学校とでは役割は異なりますが、子どもの学びという現場では、塾も学校も同じ。先生の役割も責任も同じだと私は思っています。小学校の教師として34年、その後大学教師としてたくさんの子どもたちに接してきました。その経験を通して学校の先生は子どもとどう向き合っているのかを感じていただき日々の指導の参考にしていただければと願っています。」

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