塾業界コラム

一流講師の条件とは<私塾界調べ>

電子教材の進化の行方

今回は教育のデジタル化がテーマ。私塾界でも塾関係者や最先端技術を生かした新規ビジネスの展開を図るビジネスマンを囲んだ討論会を実施。教育とデジタルのかかわりを、塾はどう捉えていくべきか、(株)私塾界の山田未知之副社長が語ります。

教育のデジタル化はタブレット型PCの活用を中心に進む

麻生政権時に発表された「スクールニューディール」では、電子黒板の導入が話題になりました。しかし、2009年12月には民主党政権における総務省から、いわゆる「原口ビジョン」の中の「フューチャースクール構想」の一部として2015年度までに小中学生に一人一台のデジタル教科書を持たせる構想が発表されました。教室単位のデジタル化ではなく、生徒単位でのデジタル化に方向性が変化したわけです。そこで注目されるのがタブレット型PCです。

現在、タブレット型PCの代名詞といえばiPad。そのシェアは約9割といわれています。

○世界全体のメディア・タブレット販売数

※IDCの資料を元に経営教育研究所が作成

学校や塾業界でもiPadを教育に活用する試みが次々と報告されています。

アメリカではニューヨーク市の公立学校が2000台以上のiPadを発注。すでに教育現場での導入が進んでいます。アイルランドの中高一貫校では、従来の紙の教科書からiPadに切り替えての授業が開始されました。シンガポールの単肥根素中学校では理数系科目をiPadで教えています。

日本でも千葉の袖ヶ浦高校で、全国の公立校として初めてiPadを導入し、情報コミュニケーション科を立ち上げています。福岡の博多高等学校ではiPadを100台導入し、eラーニングに活用しています。

塾業界でもすでに多くの取り組みが行われています。

○iPad アプリ数

※全て経営教育研究所調べ

かねてより、教育のICT化が求められてはきましたが、何のためにどんな風にICT化を進めていくのかは不透明でした。しかし、近年のタブレット型PCの普及も相まって、今後、教育におけるICT化は、タブレット型PCの活用を中心に議論されると見て間違いないでしょう。

「受験はアナログなもの」という前提自体が変化する?

教育のICT化について、私塾界では2011年6月7日に討論会を行いました。塾関係者を始め、ITを活用した次世代教育を研究している株式会社電通国際情報サービスオープンイノベーション研究所に参加して頂き、これからの教育における先端技術の利活用の方向性や必要性について活発な議論が行われました。

「タブレット型端末の導入には費用がかかるといわれているが、中学3年生が年間に使用する教材費は約8−9万円。印刷代にこれだけかけるのであれば、タブレット型PCを1台買ったほうが安上がりという計算も成り立つ」という意見がある一方、「受験はアナログな技能。学習の最適化という側面的な利用はできても、教育そのものがデジタル化することはあり得ない」という塾経営者の見解もありました。

たしかにこれまでの受験はアナログな技能でした。しかし、今後はそうともいえないかもしれません。最後にそのことについて考えてみましょう。

マーケティング業界においては1996年前後に生まれた世代を「ネオ・デジタルネイティブ世代」などと呼び、通称「96世代」などと呼んでいます。

それまで「情報」とは自分の頭の中に蓄積しておかなければいけないものだったのですが、96世代以降、「情報」とは情報端末の中に蓄積しておき、必要に応じてそれを引き出せばいいものに変化しているといわれています。当然教育における情報の取り扱い方も変わるわけです。
よく大学の定期試験などでは、辞書やノートの持ち込みを認められることがありましたよね。それと同じで、情報は媒体に記憶させ、それをどう活用するのかに重点をおく教育に変化していくことが考えられます。

昨年、京都大学の入学試験で、会場からケータイを通じて問題を掲示板に掲載し、回答を募るという新手のカンニングが発覚して世を驚かせましたが、近い将来、入試においてタブレット型PCを持ち込み可能にするということもあり得るでしょう。そうなると入試対策の指導も根本から変化せざるを得ません。

教育のデジタル化とは、単に黒板や教科書が電子デバイスに変わるだけではなく、教育の目的自体がかわることを意味する可能性が高いのです。

ここで、ちょっと考えてみてください。現在、多くの塾では、黒板やホワイトボードを中心とした授業を行っていることと思います。その、黒板やホワイトボードがある日突然なくなったとしたら、どうなるでしょうか。現在生徒たち一人ひとりに渡している教科書がある日突然なくなったとしたら、どうなるでしょうか。授業はできなくなるでしょうか。

きっと多くの塾の先生たちは柔軟な発想で工夫を凝らし、別の手段で滞りなく授業を行うことができるでしょう。教師や生徒が使う道具が変化しても、教育の目的に変化がない限りは、それほど影響がないのではないかと思います。二昔前までは、一般企業においては帳簿と電卓が主役でした。しかし今は一人一台のパソコンを駆使して仕事するのが当たり前になっているのと同じです。

しかし、デジタル教材の導入により、教育の目的自体が変わるとしたら、インパクトははかりしれません。塾の存在意義自体も大きく変化するでしょう。

アメリカで「メディア王」と称されるルパード・マードック氏は、ニューズ・コーポレーションが教育テクノロジーマーケットに参入することを発表する際、「教育は、現在でもビクトリア朝時代とほとんど同じで、デジタル革命に取り残された最後のもの」と表しました。その通りだと思います。

教育のデジタル化という文脈の中で、「iPadをどう使いこなすか」ではなく、「新しい教育の時代に塾はどういう役割を担うべきなのか」ということに、塾関係者は危機感を覚えるべきではないかと思います。

文責:私塾界/全国私塾情報センター 副社長 山田未知之

プロフィール

山田未知之(やまだみちゆき)

私塾界/全国私塾情報センター 副社長

1977年、埼玉県生まれ。2010年より塾業界唯一の情報誌『月刊私塾界』を発行する株式会社私塾界の副社長を務める。同社は、1981年の創刊以来、全国の学習塾経営のサポート役として経営情報の提供やセミナーの開催、コンサルティング業務や進学資料の提供などを行っている。2011年には、わが子に合った塾選びのための情報サイト『塾図鑑』を立ち上げるため、バウンス株式会社を設立した。

ホームページ http://www.shijyukukai.jp/

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