塾業界コラム

一流講師の条件とは<私塾界調べ>

新学習指導要領で「ついていけない」の2つの意味

4月より新学習指導要領が全面実施となった公立中学校。学習内容&学習時間の増により、“ついていけない”生徒が増えるのではと、かねてより懸念されていました。
“新しい教育”が始まって数ヶ月、いよいよ“ついていけない”を実感し出した生徒や保護者に、塾はどうアプローチをしていけばよいのでしょう。山田副社長が語ります。

週6日制の内容を週5日間でこなす

今年の4月から中学校でも新学習指導要領に基づいた授業が行われるようになりました。「教科書が3割厚くなった」などということはよく言われますが、変わったのは教科書のページ数だけではありません。いま一度新学習指導要領のポイントをおさらいしましょう。

主要五教科については中学3年間で360時数も授業時間が増え、1925時数になりました。これは土曜日も通学していた2001年までの水準と同じです。学校週6日制のころのコマ数を無理矢理週5日の通学日の中に押し込む形です。週末は2日間まるまる学校を休める代わりに、平日は朝から夕方までずっと授業を受けていなければなりません。メリハリなんてありません。生徒の負担だけでなく教員の負担も大きくなっているのではないかと推測できます。

中学3年間の授業時間数の変化
旧課程 新課程 増加率
英語 315 420 133.3% 105
数学 315 385 122.2% 70
国語 350 385 110.0% 35
理科 290 385 132.8% 95
社会 295 350 118.6% 55
5科合計 1565 1925 123.0% 360

また、今回の学習指導要領の改訂では、いわゆる「はどめ規定」の撤廃も大きな話題になっています。これまでは「平等教育」の建前上、「これ以上は教えない」という「はどめ」が規定されていたのですが、それがなくなりました。つまり平等教育からの脱却です。

今後ますます「詰め込み」の傾向が強まる

かつてであれば週6日間かけて履修していた内容を5日間に凝縮しているのですから1日あたりの学習項目は当然多くなります。授業中に言われたことをその場で理解することに長けている生徒もいれば、授業で習ったことを過程でも復習してはじめて理解が深まる生徒もいるでしょう。後者の生徒にはつらい状況となりました。力はあるのに、「授業のペース」についていけないがために、ジリジリと落ちこぼれていく生徒も出てくるはずです。

教員たちも増えた単元を消化することで手一杯でしょうから、多少躓いている生徒がいたとしても、そこで授業のペースをゆるめるわけにもいきません。授業コマ数は毎日ぎっしり詰まっているうえに、放課後の時間も限られており、補習に当てられる時間も少ないでしょう。

授業の進度について行けない生徒は、土曜日の家庭学習でそれを補えればいいのですが、自学自習でそのようなことができる中学生がどれほどいるでしょうか。

しかも、「はどめ撤廃」により、できる子はより高いレベルを学習していいことになります。昨今は公立高校でも大学進学実績を追い求める傾向が強まっていますから、より優秀な生徒を集めるため、高校入試でもより難易度の高い問題が出題される傾向も出てくるでしょう。そうなると、中学校の教員としては、より高いレベルの学習項目まで踏み込む必要に迫られるでしょう。今後ますます「詰め込み」の傾向が強まるのではないかと予測できます。

もともとは、学力低下への対応策として導入された新学習指導要領ですから仕方がありません。学力上位層がより高いレベルを目指す一方で、学力低位層は置いていかれることになるでしょう。こうなると学力の二極化は避けらません。

学習レベルより学習スピードに「ついていけない」

というのが、よくある新学習指導要領を巡る議論です。しかしここでは、新学習指導要領の問題点を挙げたいわけではありません。大事なのは、それを塾の経営にどう生かすのか、ということです。

これまでの「ゆとり教育」においては、「学校の勉強だけでは足りないから塾でより高度な勉強をしましょう」という文脈で生徒募集が成り立っていました。しかし今は逆です。「学校の勉強についていけないといけないから塾に通いましょう」というメッセージになるかと思います。

しかし、ここで注意が必要です。「学校の勉強についていけない」には2つの意味があると思います。

1つは学習レベルについていけないという意味。たとえば、中3数学の「解の公式」や理科の「イオン」など新たに高度な学習項目が追加されたことで発生する問題です。いわゆる落ちこぼれ対策としての補習塾の存在価値に焦点が当たります。これはいつの時代もあることです。学習指導要領が変わったことでその層が広がることは予測できますが、新しい視点が必要なわけではありません。そこで、もうひとつが重要になってきます。

新学習指導要領の導入に伴って言われる「ついていけない」のもう一つの意味は、もともとの学力はあるのに、授業の進度についていけないという意味です。先に述べたように、かつてであれば週6日で履修していた内容を週5日間に凝縮しているのです。週6日でも「詰め込み教育」と揶揄されたのに、それをさらに凝縮しているのですから、そのスピードについていけず「消化不良」を起こす生徒は続出するでしょう。

ところが、「難しい項目が増えた」という認識はあっても、日々の学習進度が加速しているという認識を持つ保護者は少ないのではないでしょうか。

「もったいない学力中位層」をターゲットに

そこで塾の発するべきメッセージは、「もったいない!」ではないかと私は思います。家庭学習も含め、もう少し時間をかけて学習すれば十分に消化できる内容が、時間がないために消化できないのは「もったいない」のです。

そこに新しい視点での塾の存在意義が生まれると私は思います。単純な学力不足による落ちこぼれではなく、学力はあるのに授業進度が速すぎるために消化不良をおこしがちな学力中位層をターゲットにしたコミュニケーションが生まれます。

放課後の時間が減っているのですから、塾での授業数が増えればさらに生徒たちは疲弊します。不況の折、授業時間数を増やしても授業料は上げにくいという事情もあるでしょう。

ですから、塾ではむやみに授業数を増やすのではなく、学習のペースメーカーとして生徒に伴走し、効率的な家庭学習指導を含めた指導を行い、それを生徒募集のメッセージにするという戦略が有効なのではないかと思います。

文責:私塾界/全国私塾情報センター 副社長 山田未知之

プロフィール

山田未知之(やまだみちゆき)

私塾界/全国私塾情報センター 副社長

1977年、埼玉県生まれ。2010年より塾業界唯一の情報誌『月刊私塾界』を発行する株式会社私塾界の副社長を務める。同社は、1981年の創刊以来、全国の学習塾経営のサポート役として経営情報の提供やセミナーの開催、コンサルティング業務や進学資料の提供などを行っている。2011年には、わが子に合った塾選びのための情報サイト『塾図鑑』を立ち上げるため、バウンス株式会社を設立した。

ホームページ http://www.shijyukukai.jp/

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