塾業界コラム

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塾だからこそ取り組みたい、「発達障害」への対応

塾にもカテゴリがあるように、勉強が得意な子、苦手な子、その対象となる生徒層も多種多様。しかし、単純な「学力」という物差しの外にいる子どもらの存在を忘れてはなりません。発達障害――彼らに塾はどう向き合っていくべきか、山田社長が語ります。

※公的機関等の表記に準じ、本記事においては「障がい」ではなく「障害」と表記しております

発達障害とは何か

「そもそも発達障害とは?」と聞かれて、正確に答えられる教育関係者がどれだけいるでしょうか。何となく分かるけど、どういった症例があるのか、それが学習にどのような影響があるのかまでは知らない、という方も多いのではないかと思います。しかし、そこに問題があるのです。発達障害の社会的認知はまだまだ低いと言わざるを得ません。

では、発達障害の定義とは何でしょう。発達障害者支援法によると、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」とあります。分かりやすく置きかえると、言語能力・運動能力・社会性などに発生する障害です。つまり、ひとことで「発達障害」と言ってもそれは様々な症例の総称だということですね。しかもその症状の多くは、コミュニケーションや対人関係に支障をきたすものが多く、それゆえに不当な評価を受けている現実があります。

まだまだ低いと言わざるを得ぬ理解度

そもそも一昔前までは、発達障害という概念すらありませんでした。学校や社会、そして塾、時には最愛の親からさえも「何を考えているか分からない子」「自分勝手な子」の烙印を押され、福祉や社会的理解の狭間に完全に置き去りにされていたのです。近年ではずいぶんと理解も進みましたが、冒頭で申しましたように、まだまだ完全とは言い難い状況です。そこでまず、発達障害と定義づけられている代表的な症状をご説明します。下記、表1をご覧ください。

(1) 広汎性発達障害 (2) 注意欠陥多動性障害(ADHD) (3) 学習障害(LD)
A 自閉症 B アスペルガー症候群

表1

もう少し詳しくご説明します。

(1) 広汎性発達障害

コミュニケーション・社会性をつかさどる脳の領域に発生する発達障害の総称
A 自閉症
「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」が見られる。半数以上は知的障害を伴うが、そうではない「高機能自閉症」も存在する
(症例)急に予定が変更になった、本等が巻数順に並んでいない、知らない場所に行く、などのできごとに異常な不安を覚え、耐えきれずに大きな声を上げるなどする
B アスペルガー症候群
広義における自閉症の一種。知的障害を伴わない自閉症とも言われることがある。他者の気持ちを推測するのが苦手で、興味を持ったものには、極めて強い拘りを示す
(症例)見たまま、考えたままを言葉にするが、それによって相手がどう感じるかを理解できないため対人トラブルを起こしやすい。言葉を額面通り受け取る傾向があり、比喩や冗談、イヤミなどをそれとは理解できないことがある

(2) 注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)

「集中を持続できない」「じっとしていられない」「衝動的に行動する」などの症状が出る
(症例)授業中に歩き回ったり、忘れ物が絶えなかったりいったことがあるため、本人は努力しているつもりなのに「ヤル気がない」とか「怠け者」と勘違いされてしまう。キレやすいといった傾向も見られる

(3) 学習障害(LD:Learning Disorders または Learning Disabilities)

知的発達に遅れがないにも関わらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」などの学習や行為に著しく困難を示す
(症例)地図が読めない、日時や場所の概念が理解できない。左右の違いが理解できない、文章を順番通りに読むことができないなど

単体でなく、これらを併発する場合もあります。

そこでまず我々が取り組むべきなのは、こういった障害の存在を知ること、その上で彼らとどう向き合えば良いのか考えること、そして行動に移すことではないでしょうか。

発達障害児教育に取り組む塾の存在

発達障害児のための指導・支援を「感覚教育」と呼ぶことがありますが、これについて石川教育研究所の石川幸夫氏はこう指摘しています。内容を要約しますと、

これまで、発達障害児に対する指導法は限られており、「ダメな生徒」というレッテルを貼るしかなかった。そのため子ども自身も、本当に自分はダメな奴だと思い込んでしまう。この負の連鎖を断ち切らねばならない。

地域社会が子どもの成長を育んできたように、民間教育もまた同様の立場だ。今後の学力新時代を見据えた場合、新たに必要な指導こそ「感覚教育」だろう。これからの民間教育の一つの柱となる筈だ。

といったもので、発達障害児への対応、その教育の重要性を説いています。

中にはすでに、この分野における教育に積極的に取り組んでいる塾もあります。たとえば東京都の「翼学院」は、何らかの障害や困難さを抱える子ども達のための専門塾です。学院長の芦澤唯志氏自身、ADHDを抱える子どもだったそうで、区のLSA(学習支援員)としての経験等を自塾に活かして活躍中です。

「アスペルガーを抱える子が特待性として高校合格」「手のつけられない不良と呼ばれた子が進学校に入り、外交官を目指している」など、「学校から見捨てられた生徒もどうにかしてくれる塾」として、地域から高い認知と評判を得ています。

また、埼玉県の「自然学園」では、その支援対象を未就学児童から大人まで広げ、フリースクール的なアプローチで自立への継続的サポートを行っています。ほか、愛知県の「ガッツ家庭教師」は独自に「発達障害コース」を設けて彼らの教育に当たる一方、家庭教師や保護者向けセミナー等を主催。正しい支援と発達障害への理解を広める活動をしています。

そもそも、公教育の枠では難しい独自の教育を実践できることが、本来の塾のウリであり、存在意義のひとつ。原点をたどれば、かつて松下村塾などがそうであったように、社会や学校の物差しで「不適合者」とされた者たちにも、光を当ててきたのが私塾です。あえてこれをビジネス市場的側面で捉えるならば、この分野には「私塾だからできること」がまだまだ残されています。あなたがたの助けを待っている子どもたちが、ここにもいるのです。

文責:私塾界/全国私塾情報センター 代表取締役社長 山田未知之

プロフィール

山田未知之(やまだみちゆき)

私塾界/全国私塾情報センター 代表取締役社長

1977年、埼玉県生まれ。30年超の歴史を誇る塾業界のトップ専門誌『月刊私塾界』を発行する、株式会社私塾界/全国私塾情報センターの代表取締役社長。同誌を創刊した亡父・山田雄司氏の遺志を継ぎ、2012年10月より現職。民間教育のあり方や業界への想い熱く、全国約2,000社の学習塾のサポート役として、経営情報の提供や研修・セミナーを開催している。

全国私塾情報センターオフィシャルサイト http://www.shijyukukai.jp/

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