塾業界コラム

一流講師の条件とは<私塾界調べ>

変わる大学AO入試、塾の対応策とは

ここ数年、「大学生の学力低下」と「AO入試」の相関性を叫ぶ声が強く出ています。分かりやすく言えば「AOのせいで能力の低い大学生が増えた」ということです。それは当たらずとも遠からずかもしれませんが、AOによってその可能性を伸ばす子どもたちが多いのも事実。これからの大学AO入試が進む方向性と、塾での対応策について山田社長が語ります。

AOをとりまく誤解や思い込み

ここ10年来の大学入試形態の多様化で、その象徴とも言える存在がAO(アドミッションオフィス)入試でしょう。AO入試は、アメリカではごく一般的に行われている入試方法ですが、日本ではまだ比較的間違った先入観・イメージで捉えられがち。なぜなら親も、学習指導者の多くも、自らがAO入試を経験してきた世代ではないからです。それは塾関係者にとっても言えることでしょう。おそらく「学力試験を課さずに面接や小論文で合否が決まる簡単な入試」「一芸入試みたいなもの」「推薦入試が名前を変えたもの」という捉え方をしている人も多いのではないでしょうか。

しかし、AO入試は決して「誰でも受かる」といったものではありません。極めてハイレベルな合格ラインを設定している大学も多く、そこで必要な指導内容は、実は「私塾」という存在と非常に親和性が高いものなのです。そこで、AO入試について基本から振り返りながら、塾でどのような対応ができるか考えてみたいと思います。

知識偏重型入試への反省から

日本で初めてAO入試が実施されたのは1990年。慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(通称SFC)が行ったものです。その後は各大学へと広まりを見せ、日本の大学の約7割がこれを導入するに至りました。

では、そもそもAO入試は受験生たちの何を見ているのでしょう。バックグラウンドには「単なる偏差値的エリートはいらない」という考え方があります。大学側が求める学生像を明文化した「アドミッション・ポリシー」に基づき、自学に相応しいと判断した学生のみを合格させるのです。その評価基準とは、成績だけでなく、大学での学習への意欲・熱意、適正、行動力や論理的な思考力など。判定のツールとして志望理由書・面接・高校の成績・小論文・プレゼンテーションなどを課し、それらから多面的に判断するのです。

PISA型学力やコミュニケーション力の低下などに見られるように「知識量を問うだけの受験をクリアしてきたことと、人材的価値は必ずしも一致しない」という発想で、従来の偏差値至上主義の中で埋もれていた原石を掘り起こそうとしたとも言えるでしょう。

AOで課される主な試験内容

志望理由書 自分はなぜその大学に入りたいか。入って何がしたいのかなどを述べる自己PR書類。この内容が合否において大きなウェイトを占めると言われます。
面接 主に志望理由書に書いたことを中心に行い、コミュニケーション力や入学への熱意を見ます。内容に矛盾はないか、もっと言えば「本当に本人が書いたのか」も見ています。
高校の成績 高校の評定平均や検定試験のスコア、入賞歴、校外活動での実績を見ます。これらをそもそもの出願最低条件に課す場合もあります。
小論文 その学部での学びに関連する、特定、もしくは自由課題に基づき500〜2000文字程度の小論文を課し、表現力や国語力、論理的思考力を判断します。
プレゼンテーション 特定のプレゼンテーマを与え、自らの考えを理論的に証明できる力を見ています。ポスターセッションの場合もあれば、形式自由の場合もあります。

人物本位の判定基準

ここまでを見ていただくとお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、AO入試の判定基準は極めて「就職採用」との共通点が多いです。ここからも「勉強ができるだけの人間はいらない」という大学側の意志が読みとれるでしょう。つまり、AOは「人物本位」で合否を判定する仕組みであり、ここが推薦入試などと異なる点です。
しかし、受験生本人はもとより、指導者側の認識不足・思い込みも手伝って、AO対策として必要な準備や指導を行えていなかったがために招いた、笑えない話も耳にします。

例えば、ある大学をAOで受験した男子生徒。彼は甲子園出場経験がある高校球児でした。高校3年間を通じて野球に打ち込んできたことをユニークにアピールしようと、面接の場で素振りをして見せたのです。それに対する面接官の返答は、「で?」。彼は一気に頭が真っ白になり、あえなく不合格。AOを「一芸入試」と捉えて舐めていたこと、アドミッションポリシーへの理解不足の最たる例です。

他にも甘いプレゼンテーションに対して「何それ? つまんないね」と言われ、その場で泣き出してしまう受験生や、志望理由書の内容を激しく突っ込まれ、嘘の上塗りで矛盾だらけになりパニックに陥る受験生も多くいたようです。

いずれも「AOは甘くない」ことを示しており、明確な「正解」があってそれを覚えれば良いぶん、一般入試の方が楽だという声さえも聞かれます。

学力低下への懸念から、選抜方法の見直しが進む

しかしその一方で、AOの問題点を危惧する声も少なくありません。学力試験を課さないがために、入学後の授業レベルについて行けず、中退や留年をする学生が続出したのです。また、一部の私立大学は、AOを安易な学生確保の手段として用いました。中教審も「AOが大学生の学力低下を招いた一因」と指摘し、かねてから議題に上がっている「高大接続テスト」への移行も叫ばれています。ここ数年ではAO入試の廃止・縮小をする大学・学部や、センター試験などを併用する大学も増えてきました。

ただ、これは制度の問題というより、受け入れ側の問題でしょう。慶應義塾大SFCの村井純・環境情報学部長も、新聞の取材に対し「どんな学生でも受け入れられる環境があるからAOが機能する」と発言しており、多くの大学がAOで失敗したのは、その受け入れ態勢の不備が招いたものだと指摘します。

そのような背景の中、一度はAOを廃止した九州大学法学部が、選抜方法を見直してAOを復活させる決定をしました。その内容は、センター試験の受験と、TOEFL iBT61点以上、TOEIC600点以上、英検準1級以上などのいずれかを満たすことを出願条件に課すもの。国公立を中心にセンター試験とAOを併用する大学は以前から多くありましたが、特に今回の英語検定系の条件は相当なハイレベルです。

ここから読み取れるのは「学力だけもなく、人物だけでもなく、その両方を見る」という方向性ではないでしょうか。今後のAOは、この傾向が高まるとの見方が強いようです。

これからのAO対策に、学習塾の光明あり!?

これをふまえて、塾にできることとは何でしょう。先述した「私塾の存在意義とAOは親和性が高い」という言葉を思い出していただけますでしょうか。塾は、子どもたちの学力を高めることが命題ですが、同時にその原点は人間教育です。子どもたちが志を持って学ぶこと、ひいては働き方や生き方にまで影響を与えてきました。その「子どもの可能性を引き出す」という理念は、本来、AO対策にぴったりなのです。

現在、AO受験対策コースというコンテンツは、ほとんどが首都圏の予備校に集中しています。これは裏を返せば、教育の地域格差なのです。地方では満足なAO対策が受けられず、多くの可能性を秘めたまま偏差値至上主義の中で戦わざるを得ない子どもたちが、ごまんといます。これを背景に、一部には「AO専門塾」も出現し始めています。AOをマーケットと捉えるなら、特に地方の学習塾にとっては大きなチャンスと言えるでしょう。

文責:私塾界/全国私塾情報センター 代表取締役社長 山田未知之

プロフィール

山田未知之氏

山田未知之(やまだみちゆき)

私塾界/全国私塾情報センター 代表取締役社長

1977年、埼玉県生まれ。30年超の歴史を誇る塾業界のトップ専門誌『月刊私塾界』を発行する、株式会社私塾界/全国私塾情報センターの代表取締役社長。同誌を創刊した亡父・山田雄司氏の遺志を継ぎ、2012年10月より現職。民間教育のあり方や業界への想い熱く、全国約2,000社の学習塾のサポート役として、経営情報の提供や研修・セミナーを開催している。

全国私塾情報センターオフィシャルサイト http://www.shijyukukai.jp/

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