塾業界コラム

一流講師の条件とは<私塾界調べ>

塾は「第五次産業」に進化できるか

「塾は教育機関である」――。その誇りは間違いでないにしても、経済活動を行っている事業体であることもまた事実です。では、塾とはビジネス上どのような存在なのでしょうか? そしてそこに、顧客から必要とされ、生き残る塾とそうでない塾の違いがあるのではないでしょうか? 社会の枠組みの中における塾の存在意義の変化について、山田社長が語ります。

学習塾は第三次産業?

「塾はサービス業だ!」と言う人。「いや、教育という崇高なものだ!」と言う人。はたまた「食うための手段」として割り切っている人。塾の在り方については様々な意見や価値観があります。

しかし経済活動を行っている以上、塾もビジネスであることは客観的な事実です。統計の際に用いられる日本標準産業分類によれば、塾は「教育・学習支援業」として第三次産業に位置付けられています。

(表)日本標準産業分類における定義(学習塾は第三次産業)

第一次産業 自然界に直接働きかける産業 農・林・漁業、鉱業など
第二次産業 第一次産業が採取・生産を加工する産業 製造業、建設業など
第三次産業 第一次、第二次どちらにも属さない産業 小売、運輸、サービス業など

最近では、第三次産業に属する産業が増えすぎていることもあり、物質やエネルギーなどの大量消費を伴わない産業として、通念的に「第四次産業」と呼ばれるものもあるようです。ITやソフトウェア、芸能、マスコミなどがここに属します。

新たな概念、第五次産業の登場

しかし、元スターバックスジャパンCEOの岩田松雄氏は、非常に興味深いことを仰っています。弊社が行ったセミナーの講師としてお招きした際、その講演でこんな発言をなさったのです。「塾は第五次産業になれる」と。

第五次産業とは、意訳すると「第一次から第四次までの枠にとらわれることなく、その業務を自由に融合したり発展させたりして、これまでになかった価値を生み出す産業」という新しい概念。

分かりやすく言えば、岩田氏の定義する第五次産業は「感動経験産業」です。そしてスターバックスもそんな第五次産業に属する企業だとのこと。岩田氏の言葉を借りれば「スターバックスはコーヒーショップだが、コーヒーを売っているのではない。コーヒーを通じてお客様に『感動』を届けている会社だ」と言うのです。

同じように、卓越したホスピタリティで有名なリッツカールトン、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドも第五次産業だと言います。岩田氏は「スタバのビジネスライバルは他のコーヒーショップではない。リッツやオリエンタルランドこそが競合だ」と言い切りました。そして、塾もそんな第五次産業に入れるはずだと。

マニュアルではなく、心で動く働き方

スターバックスが持つ多くの感動秘話のひとつに、こんなエピソードがあります。

ある日、お店の前で交通事故が発生。幸いケガ人はいなかったものの、ドライバーの女性はうろたえ、顔面蒼白。そのとき、パートナー(スタバでは、従業員をこう呼びます)はとっさに一杯のコーヒーを持ちより「どうぞこれを飲んで心を落ち着かせて下さい」と。以来、この女性がスタバのファンになったことは言うまでもありません。

もちろん、女性はお客様でも何でもなく、たまたま店の前で事故を起こしただけです。しかし、これと同じレベルのことを、社員・アルバイト問わずどの店舗のパートナーもできる。それがスタバの強みであり、コーヒーを通じて感動を届けるということなのです。

「夭逝した我が子を思い出しながら、お子様ランチを食べたい」という夫婦に、9歳以下と決められていたお子様ランチを夫婦+お子様と3人分提供し、二人用ではなく家族用の席にご案内したディズニーランドのレストランキャスト。「重要な書類を部屋に忘れた! 今日、原本が手元にないと間に合わない!」という宿泊者のため、即座に新幹線に飛び乗り、大阪→東京へと書類を届けたリッツのホテルマン――。岩田氏が「ライバルだ」と言った第五次産業の企業では、これが「当たり前」です。

しかしなぜここまで、従業員一人ひとりが徹底した自発的行動を取れるのでしょうか? その答えとして、例えばリッツカールトンの『ゴールドスタンダート』と題する「クレド」(=企業の信条や行動指針を簡潔に示したもの)はあまりにも有名です。全スタッフがこれに基づいて行動しているからこそ、これらの行動が反射的にできるのです。「店前で事故が起こったらコーヒーを出すこと」「忘れものは新幹線で届けること」などと一つひとつをルール決めすることはできない以上、マニュアル化ではこうした自発性に基づく行動を生み出すことはできません。

ミッションに基づき、第三次産業からの脱皮を目指せ

つまり必要なのは「ミッション」、すなわち「使命」。第五次産業の企業足り得るためには「ミッション経営」こそ肝であると岩田氏は言います。塾であれば「あなたは塾人として、あなたの会社は塾として、何をしようとしているのか」というのがミッションでしょう。スタバが「コーヒーを通じて感動を」と掲げたように、リッツでもオリエンタルランドでも、この「ミッション」が明確になっています。

「あなたの塾の使命は何か」と聞かれたとき、私たちは「勉強を教えること」「成績を伸ばすこと」と答えてしまいがちです。しかし、それだけでは足りないのではないでしょうか。勉強を教え、成績を伸ばすことによって、その先にあるどんな「感動」を生徒や保護者に届けたいのか。そこをしっかり見据え、内外に対し明確にすることこそ、塾のミッション経営なのだと思います。

入会面談で「こう言われたら、このように応酬する」「こう勧めれば夏期講習のコマ数をたくさん取らせることができる」というマニュアル方式では、職員や先生の自発的行動は引き出せませんし、自社の利益しか考えない経営スタイルを続けていては、やがて市場からも相手にされなくなるでしょう。

これを読まれている経営者の方にお願いです。どうか自社のミッションを示し、塾という立場で何を届けようとしているのか、あなた自らスタッフにしつこいくらい熱く語ってみてください。そして、それを共有・共感できる人たちと組織を作って下さい。いろいろな組織を見てきましたが、経営危機が訪れた時ほど、ミッションに立ち返り、シンプルに成すべきことを成せるかどうかが問われます。

塾はその歴史を紐解いて行けば、もともと理念や信念の塊のような組織。ある意味、「ミッション経営」に最も近い所にいるとも言えます。釈迦に説法かもしれませんが、ぜひ貴塾のミッションは何か真摯に考えてみてください。塾はもう、第三次産業から進化し、その枠を抜け出す時に来ているのではないでしょうか。

文責:私塾界/全国私塾情報センター 代表取締役社長 山田未知之

プロフィール

山田未知之氏

山田未知之(やまだみちゆき)

私塾界/全国私塾情報センター 代表取締役社長

1977年、埼玉県生まれ。30年超の歴史を誇る塾業界のトップ専門誌『月刊私塾界』を発行する、株式会社私塾界/全国私塾情報センターの代表取締役社長。同誌を創刊した亡父・山田雄司氏の遺志を継ぎ、2012年10月より現職。民間教育のあり方や業界への想い熱く、全国約2,000社の学習塾のサポート役として、経営情報の提供や研修・セミナーを開催している。

全国私塾情報センターオフィシャルサイト http://www.shijyukukai.jp/

これまでの記事

  1. 学研塾ホールディングス
  2. トップメニュー
  3. 講師憲章
  4. 学研・塾講師検定
  5. CSR活動
  6. お知らせ

コラム

学研塾HDグループ・トピックス

早稲田スクール

9/17:中3対象の「第2回共通テスト対策特訓」スタート

あすなろ学院

9/16、23:数英理社、入試対策実戦ゼミ体験会=毎年的中多数の入試予想問題演習と解説講座を体験

学習塾イング

「中3生対象 志望校突破ゼミ9月スタート!」土日を中心に「実力テスト対策」「入試対策」のゼミを開講。(ゼミのみ受講も可能)

早稲田スクール

9/10:小6受験生対象の「絶対合格特訓シリーズJr」スタート

学習塾イング

「イング美原校リニューアルOPEN!」9月新入生、リニューアル特典。入学金免除&9月授業料・学習支援費:50%OFF(先着10名様限定)

あすなろ学院

9/1〜30:ドリスタ7。定期テスト対策はこれでばっちり。7大イベントに参加で成績UP&景品GET!

全教研

8/24〜26:エコアドロケット・種子島

全教研

8/19〜23:小4〜中3夏期合宿(小4小5中1中2は8/22まで)

全教研

8/18:中学生特待選抜テスト

全教研

8/7〜11:高3夏期合宿

ページトップへ戻る